ワセカープ(早稲田大学カープ)によるアカデミック講座

ワセカープは早稲田生を中心としたアカデミック・ボランティアサークルです!✊このブログではサークルメンバーが学んでいる専門分野や、ためになる雑学をわかりやすく記事にしました!✨

離婚について考える②

1.離婚が子どもに与える影響は?

前回の記事で、9割以上の日本人が「離婚して幸せになれるのなら離婚してもよいと思う」と考えているとお伝えしました。一方で、離婚が子どもに与える影響に関しては、離婚は子どもにとっては喜ばしいことではないと考える人が多いようです。例えば9割以上の大学生は「離婚すると子どもにストレスがかかる」と考えています(出典https://www.syaanken.or.jp/wp-content/uploads/2012/05/sh1434p21-25.pdf

では、具体的に、親の離婚は子どもにどのような影響を与えるのでしょうか...?ここでは子どもたちの心の状態や感情の変化など内面に焦点を当てて書きたいと思います。

 

①親の離別を経験することによって生じる不安、怒り

女の子, 森林, 魅惑, 若いです, 魔法, かわいい, 孤独です, 失われました, 子, 子供, 冬, 雪

親が離婚すると、子どもに様々な不安症状が現れることがあります(悪夢を見たり、音に敏感になったり...)。子どもが不安になる原因は、自分は親から捨てられたのだと感じたり、いずれもう片方の親も失ってしまうのではないかという恐怖からきているようです(出典:棚瀬一代著「離婚で壊れる子どもたち」)

 

さらに、親の離婚を経験した子どものほとんどは孤独や戸惑い、親に対する怒りを抱えているそうです。怒りの現れ方には男子と女子に違いがあり、男子の場合は友達に対して暴力的になるなど、怒りを外に向ける場合が多いのに対し、女子は怒りを自分の中に閉じ込め、自傷行為などにつながることが多いようです(出典:棚瀬一代著「離婚で壊れる子どもたち」)

 

このように、両親が離れ離れになってしまうことは子どもにとっては大きな傷となり、人格形成や人間関係にも影響を与えます。

 

②人からの愛を受けること、人を愛することが難しくなる

孤独です, 非表示, 悲しい, 若いです, だけで, 孤独, 意気消沈した, 問題, 少年, 男, 壁

親の離婚を経験した子どもたちは、自分に好きな人や恋人ができても、「いつかは別れてしまうのではないか、ずっと一緒にいることはできないのではないか」という怖れを抱いてしまう傾向にあるそうです。両親の離婚がトラウマとなり、夫婦の関係が永遠に続くというイメージができなかったり、仲の良い両親のモデルがないまま育ってしまったことが背景にあると言えます。

 

また、愛の器は大人になってから育まれるものではなく、赤ちゃんの時から育まれるものです。そのため、夫婦仲が悪かったり離婚している家庭に生まれた子どもは愛に対する感性がうまく育まれない可能性があります。誰かに対して愛する気持ちや思いやりの気持ちを持つためには、まず他人に対する信頼感を育む必要があり、赤ちゃんの時の母親との関係性が他人への信頼感を身に着けるのにとても大切だそうです(参考文献:柳澤嘉一郎著「利他的な遺伝子」)。

赤ちゃんは母親からの愛を感じ取ることで母親に対する共感を抱き、愛着を感じるようになります。ある研究によれば、赤ちゃんは生後24時間には母親の表情をまねるようになるそうです。親から十分な愛を受けて育った赤ちゃんは共感に関わるオキシトシンというホルモンの分泌量が豊富で、この分泌は大人になっても変わらないそうです。逆に、親から愛されなかった子どもは大人になった後もオキシトシンの分泌量が少ないそうです(参考文献:柳澤嘉一郎著「利他的な遺伝子」)。

 

夫婦間の仲が悪かったり、離婚している場合、親のいら立ちが子どもに向いてしまったり、子どもの面倒を見る余裕がなくなってしまいますよね...そして子どもたちが親から十分な愛を受けることができないまま大人になってしまうと、人を愛することに対して無関心になってしまったり、どうしたらよいかわからない、ということになってしまいます。

 

③離婚の連鎖

女の子, 座っている, 桟橋, ドック, 悲しい, 夜, 朝, 1 つ, 屋外, 物思いにふける, 人

離婚家庭の子どもは、親が離婚していない家庭で育った子どもたちよりも、将来離婚する確率が高いというデータがあります。夫婦二人ともが離婚家庭で育った場合の離婚率が最も高く、親が離婚していない家庭で育った子ども同士が結婚した場合の離婚率に比べてなんと3倍にもなるそうです。(参考文献:Paul R. Amato著 "Explaining the Intergenerational Transmission of Divorce ")

 

読者の方の中には、「親が離婚しているから子どもも離婚に対して肯定的なって、離婚率も上がるのだろう」と思った方もいると思います。しかし、実際には離婚家庭の子どもこそ、親の離婚によって傷ついたり苦しんだ経験があるため、自分が結婚したときには離婚しないで幸せな家庭を築きたい、と思って結婚するそうです。

 

では、なぜ離婚したくないと思っているにも関わらず、離婚家庭で育った子どもたちの離婚率は高くなってしまうのでしょうか。それは、①や②で述べたように、両親との離別を経験することで怒りや不安を抱えたまま育つことで人間関係の形成やコミュニケーションがうまくいかない、両親からの愛を十分に受けられなかったことで愛が育まれず、安定した夫婦関係を築けなくなってしまう、夫婦のモデルがいない家庭で育ったのでどのように家庭を築いたらよいかわからないということが関わっているといえます。

 

さらに、興味深いことに、親を死別で亡くした子どもと、離婚で親を失った子どもたちの将来の離婚率を比べてみると、離婚で親を失った場合の方が離婚率が高くなっています(出典:Norval D. Glenn and Kathryn B. Kramer 著 "The Marriages and Divorces of the Children of Divorce ") 。このことから、ただ単に親を失うことが離婚率の増加につながるのではなく、離婚によって親を失うことが、子どもにとって将来結婚したときに安定した夫婦関係を築くことにマイナスの影響を与えるということがわかります。

 

まとめ・感想

離婚は子どもにとって良くない、となんとなく思っていた方も多いと思いますが、実は思っていた以上に子どもたちの人格形成や将来に大きな影響を与えることがわかったと思います。もちろん、あまりにも家庭環境が悪い場合など、離婚することがプラスに働く場合もあると思いますが、夫婦仲が上手くいっていないときに、社会の流れや自分の一時の感情に任せて安易に離婚してしまうのではなくて、子どもへの負担の大きさなどを考え、まずは関係改善に努めることが重要なのではないかと感じます。

 

ちなみに、離婚が子どもに与える影響についてさらに詳しく知りたい方は、Judith S. Wallerstein氏らの著書"The Unexpected Legacy of Divorce: A 25 Year Landmark Study"がお薦めです(英語の本ですが…😅)離婚家庭の子どもを25年間にわたって追跡した研究結果がまとめられていて、一人一人の人生がとてもリアルに描かれています。

f:id:wasedaCARP:20200324021204j:plain

 

今回は子どもに焦点を当てて書きましたが、次回は、親の目線から、ずばり人はなぜ離婚するのかを探ってみたいと思います!

 

離婚について考える①

 Heartsickness, 恋人の悲しみ, Lovesickness, クーペ, ベンチ, 座っている

 

現代の日本社会では、約10人に1人(約25万人)の子どもが親の離婚を経験したことがあるそうです。(厚生労働省:親権を行わなければならない子の有無別離婚件数・構成割合及び親が離婚した未成年の子の数・率の年次推移)

確かに、今の社会を見てみても、離婚に対して肯定的な風潮が広がってきていると感じます。実際、日本人の9割以上の人が「今の世の中、離婚はよくあることである」「離婚して幸せになれるのなら離婚してもよいと思う」と考えているようです。(出典:https://www.syaanken.or.jp/wp-content/uploads/2012/05/sh1434p16-21.pdf)

 

もちろん、離婚することで夫婦間のいざこざやストレスから解放される人はたくさんいると思います。結婚する前と後でガラッと人格が変わる人もいますし...😅

 

しかし、残された子どもはどのような思いをするでしょうか。

 

そもそも、結婚するときはみんな「目の前のこの人と一生幸せに暮らしたい💕」と思って結婚すると思います。離婚を前提として結婚する人なんていないですよね(^^;

 

そう考えると、夫婦仲が上手くいかなくなったからといってすぐに離婚してしまうのではなく、夫婦仲を改善して家族仲良く暮らせる方向にもっていくことが親にとっても子どもにとっても結果としてはハッピーなのではないかと思います。

 

そこで、私が大学の論文のために調査した内容

1.離婚が子どもに与える影響は?

2.離婚の原因は何?

3.離婚を防ぐにはどうしたらいい?

 

を何回かに分けて書きたいと思います(^^)/

 

これから家庭を築いていく大学生に少しでも役に立つ内容をお伝えできればと思います。