~SDGsについて学ぼう~目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
今回はSDGsアジェンダ5「ジェンダー平等を実現しよう」について見ていきましょう!
「ジェンダー」って何?
まずは用語解説から。
英語には「性」という言葉が二種類あります。
第一にsex(セックス)。
これは単に身体的特徴によって規定される性別のことで、「生物学的性」と訳します。
第二にgender(ジェンダー)。
これは社会的、文化的につくられる性別、つまり「男らしさ」「女らしさ」のことで「社会的性」と訳します。
「ジェンダーは社会的刷り込みであって、何の根拠もない」と主張する考え方に、「ジェンダー論」というものがありますが、SDGsでいう「ジェンダー」という言葉には、おそらくそこまで批判的な意味づけはされていません。
ここでは単に女性差別を無くそう、という意味だと捉えていただいて、話を進めます。
(出典:po-kaki-to.com)
ターゲット
では、アジェンダ5のターゲット(小目標)を詳しく見ていきます。
1 あらゆる場所におけるすべての女性および女子に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
2 人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性および女子に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。
3 未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚、および女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。
4 公共のサービス、社会基盤、および社会保障政策の提供、ならびに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。
5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参加および平等なリーダーシップの機会を確保する。
6 国際人口開発会議(ICPD)の行動計画および北京行動綱領、ならびにこれらの検討会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康および権利への普遍的アクセスを確保する。
a 女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、ならびに各国法に従い、主人意識、および土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対する権限を与えるための改革に着手する。
b 女性の権利付与の促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。
c ジェンダー平等の促進、ならびにすべての女性および女子のあらゆるレベルでの権利付与のための適正な政策および拘束力のある法規を導入・強化する。
(出典:gooddo.jp)
アジェンダ5では、単に男女の格差を是正するだけなく、男性も女性も全ての人が自らの能力を最大限発揮していく社会をつくることを目指しています。
言うまでもなく女性は世界人口の半数を占めます。
女性の可能性を拓くことは、世界全体の可能性を拓くことに直結していくのです。
また、小目標の中で特に注目すべきはターゲット4の「世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する」です。
家事や子育てという、従来から女性というジェンダーに担わされてきた役割に対して「認識・評価」しようという姿勢は、そういった役割分担そのものを否定する従来のジェンダー論の主張とは、一線を画しているとは言えないでしょうか。
現状
(出典:国連広報センター)
女性差別は先進国より特に途上国で深刻になっています。
ここではいくつかの分野に分けて見てみましょう。
教育
途上国の女性の教育環境は未だ深刻です。
途上国の非識字者の60%以上が女性だというデータもあります。
(出典:gooddo.jp)
結婚
途上国における児童婚が深刻な問題です。
世界の約7億7000万人の女児が18歳未満で結婚しており、そのうち3人に1人以上(約2億5000万人)が15歳未満で結婚しています。
児童婚経験者の地域の割合は、42%が南アジア、26%が東アジアと太平洋地域、17%がアフリカとなっています。
(出典:日本ユニセフ協会「ユニセフの主な活動分野)
ただ、特に南アジアでは2000年以来の児童婚リスクが40%低下と急激に改善しています。
妊娠・出産
2019年時点で妊娠や出産で1日約800人が亡くなっており、その99%が途上国の女性です。
妊娠や出産には多くのエネルギーを必要としますが、貧困ゆえに健康的な食事ができず栄養失調となり死亡してしまうのです。
(出典:gooddo.jp)
暴力
女性の多くは暴力におびえています。
2018年時点では世界の3人に1人が暴力の被害者となっており、人間としての尊厳が守られていません。
(出典:gooddo.jp)
割礼
人権に対する観点からは、女子に対する割礼は非難の声があがっているものの、アフリカや中東を中心として広く行われています。
ユニセフによるとソマリアでは割礼を受けた女性の割合はなんと98%に上りますし、国連によると割礼を受けた女性は約2億に上ります。
ただ、途上国の人権意識の浸透により、この30年間で女子割礼の割合は激減しています。
(出典:afpbb.com)
総じてみると、実は、アジェンダ5は他の開発目標と比べてある程度の進捗が見られ、改善が進む分野でもあるのです。
(出典:afpbb.com)
まとめ
男女格差の問題は、それぞれの国や地域、民族の文化・宗教・慣習に基づく側面もあるため、複雑で根強く、簡単な解決策が見出しづらい分野でもあります。
私たちにできることは具体的にはどんなことでしょうか。
NPO・NGOへの支援
NPO・NGOの中には、女性差別の問題に取り組んでいる団体もあります。
これらの団体では、女性の貧困や人権、妊産婦の栄養についてなどの問題をフィールドとして取り組んでいます。
海外ボランティアに参加
海外ボランティアに参加して現地の人と触れ合いながら支援を行う方法もあります。
青年海外協力隊に参加して現状を直接見て、問題を肌で感じることは何より問題解決につながることです。
(出典:gooddo.jp)
最後に筆者の考えを述べさせていただくと、男女格差の問題は非常にセンシティブな問題であり、捉え方によっては上述したジェンダー論のような、イデオロギー論争に利用されてしまう恐れもあります。
ジェンダー格差という問題に向き合うとき、単にジェンダーを悪と決めつけるようなナイーブな考えに陥らないように多角的な視座を持つ必要があるでしょう。
ではまた!!